俗世間の鬱々とした悩みから、知的好奇心でいっぱいだった子供時代にトリップさせてくれる本(書評:ドミトリーともきんす)

世界は不思議なことでいっぱいで、私はその不思議を一つ一つ解明しなければならないのだ。

と、知的好奇心でいっぱいだった子供の頃に一瞬戻らせてくれました。

地べたに押しつぶされていたのに、急に宇宙に飛ばされてスイスイ自由に泳げるようになったかのような。

人間関係で悩んでいることが、ひどくつまらないことに感じました。

悩みでどうにもならなくなった時に読み返したい漫画です。

 

高野文子さん作
ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす



家族の付き合いで、よく漫画喫茶に行きます。
たいていは、今人気の漫画とか、このマンガがすごい!に入賞した作品の特集コーナーがあるのでそこから選ぶのですが、目当ての本が借りられていたり、好みでない本しか残っていないことがあります。

そんな時のために、日ごろから読んでみたい漫画をメモして、リストを作っておいています。

「ドミトリーともきんす」もリストにあった漫画です。

手にとってみたのですが、本がとても大きい。絵がシンプル。
表紙からはまったく内容が想像できません。

いつリストに入れたのか、なぜ読みたいと思ったのか、思い出せません。
しかし、自分のセンスを信じて個室に戻り読んでみました。


1ページ目を読んだとき、後悔しました。

これは漫画喫茶で読む本じゃなかった!
家で1人で暖かい日差しの中で、外の木が風に揺れるのを感じながら読む本だった!
隣で家族がカラオケ(B'z)してる隣で読む本じゃなかったと。

しかし、読むのをやめられませんでした。
結果的にやめなくてよかったです。
今日、近所の本屋をめぐっても、どこにもこの本が売っていませんでした。
手元に欲しいのでネットで買おうと思いますが、読んでいない状態なら、ネットで買おうとまでは思わず忘れ去っていたと思います。


この漫画は、自然科学の学者たちの著書を、高野文子さんがシンプルな絵柄で不思議な世界観で表してくださった漫画です。


冒頭の「球面世界」

とも子さんがミカンに星の絵を描いています。その星をどんどん大きくしていったら、輪っかになってしまいました。
ここで私は森博嗣が書いてたのと同じ話だろうかと思いました。

道路に書いた○の中にいる自分。
線をまたがずに○の外に出ることができるだろうか。
○をどんどん大きくしていくと、地球の裏側で小さな○になる。
どちらが内か外かは、自分が決めるんだ。

森博嗣笑わない数学者



笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)



読み進めると、全然違いました。
分かりやすい。でも、分からないw
常識をひっくり返されて、なになに、どうなってるの?と読み進めずにはいられない快感。

ガモフの「トムキンスの冒険」という本を元に作られたそうです。
漫画化するのが大変だったと思います。


トモナガくん

テーマは朝永振一郎の「鏡のなかの物理学」です。

どうして鏡は左右が逆になるのに上下は逆にならないの?

何度かこの問題を目にしたことがあります。
鏡をもって顔を横に傾けたり、寝転んでみたり、金閣寺が池に写った写真を見たり、1日考えてみましたが分かりませんでした。別に左右逆になってなくね?とは思いました。

降参してネットで簡単に答えを見つけてやろうと思ったら、プラトン以来2000年以上定説がないそうです。しかし色んな説はあるようで、勉強になりました。


マキノくん


牧野富太郎、植物学の方です。
マキノくんのお話は、羽が生えてどこかに飛んでいったり、小さくなって植物の中に入ったり、人間離れしているのでわくわくします。

ボタニカルアートが出てきました。
自分の中の何かを表現する絵ではなく、植物をそのまま描けば良いので、中身空っぽな私に向いていると思ったことがあります。しかし、どうしても、写真じゃだめなの?という思いがあり、始めることができませんでした。

牧野さんの絵をググってみたら、とても素敵でした。細部まで描きこまれていて気持ちが良い。この方を知れて良かったです。


幾何学模様

この漫画には、ときおり幾何学模様のような絵柄が出てきます。

私は古い建築物などを見学したとき、建物そのものよりも、タイルとか模様、きっちり並んだ幾何学模様に魅かれてしまいます。

漫画にこのような要素が使われているのを初めて見たので、感動しました。


湯川秀樹の「詩と科学」

良い詩ですよね。
こねくり回されていない、子供にも分かりやすい詩です。

詩と科学は遠いようで近い。
どちらも自然を見ること、聞くことからはじまる。
薔薇の花の香りをかぎ、その美しさをたたえる気持と、
花の形状をしらべようとする気持の間には、大きな隔たりはない。
科学者はときどき思いがけなく詩を発見するのである。
詩と科学は同じところから出発したばかりではなく、行きつく先も同じなのではなかろうか。

(抜粋)



文系も理系も、みんな同じことをしてるのだと思うと、仲良くやれる気がします。


巻末の盆踊り

盆踊りを図解しています。
上から見た図、横から見た図、足跡の軌跡で表現されています。

民俗的なものが、設計の平面図、立面図で説明できるということは、これも「詩と科学」のようですね。


最後に

この漫画を読んで、好きなことを躊躇なくやって良いのだ、という気持ちになれました。
とても人気な漫画のようですね。
本が手元に届いたら再読して、他の方の感想を読むのが楽しみです。