夢診断(180707 NHK「100分で名著」河合隼雄スペシャル2 の感想)

河合隼雄さんの本に影響を受けて、夢診断ノートをつけていたことがあります。

朝起きてすぐ、夢を忘れないうちに、ノートに夢で見たことを書くのです。

夢は無意識からのメッセージ。自分の心の問題をあぶりだせる。
夢を分析していくうちに、自分の思った通りの夢を見ることができる。

そう期待していたのですが、上手くはいきませんでした。
分析して出てきた結果は性的欲求を意味するものばかり。
参考にした夢占い辞典が悪かったのだと思いたい・・・

ただ、ノートに書いた夢は記憶から消えることはありませんでした。
書かない夢はすぐに忘れてしまうのに。
夢を覚えていることに価値はないと思うのですが、アウトプットは大事だなと思いました。

第一回の感想はこちら↓


 

 

夢とは

夢は、無意識の中の「イメージ」を表現しています。
河合隼雄先生は、夢分析箱庭療法により、イメージを手掛かりに患者の悩みを解決に導こうとしました。

ユングは人間の心について3つの層があるとしています。

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・自我を中心とする「意識」
・個人的な経験から成り立つ「個人的無意識」
・全人類に普遍的に存在する「普遍的無意識」

普遍的無意識というのは、全人類に共通するイメージのことです。そのイメージの一つ一つのモチーフを、ユングは「元型」と呼びました。

まずは元型の例を挙げます。

グレートマザー
地母神や母なるもの。実際の母親のことではない。全てを温かく優しく包み込む太母。逆に、全てを飲み込む、束縛するなど恐ろしい面も持っている。


影とは自分を映し出したもの。自我が受け入れたくない自身の嫌な面や、受け入れたくない現実の表れ。

アニマ・アニムス
自分の中に持つ異性像。男性の中にある女性像「アニマ」。女性の中にある男性像「アニムス」。人は反対の異性像を持っていなければバランスをとれない。

ペルソナ
外の世界に対して見せる顔。仮面。



夢診断の例

 

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ある不登校の中二男子が見た夢です。
肉のうずにただ飲み込まれていく恐ろしい夢。

このような夢は情報の整理などではなく、普遍的無意識から浮かび上がってきたものです。セラピストは次のように夢を紐解きます。



深淵

子宮

豊穣・死の国

グレートマザー

少年の父親は精神病でした。その事を知られたくないからと少年は不登校になりました。しかし、この夢を見た後、彼は「家で甘やかされるのが嫌だ」と言って学校に通い始めました。

家庭での父の役割が弱い。その背後にある肉の渦。何物をも飲み込むグレートマザーから解放されるため、彼は学校に通うようになりました。

生暖かい、ある種ポジティブな家の中を、彼は「甘やかされるのは嫌だ」と振り払おうとしています。つまり、ネガティブなものとして見ようとしているわけです。この夢を受けて、彼は恐らくグレートマザー的なものから距離を取っていけるようになったのではないかと考えられます。


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ある20代の女性の見た夢です。
この女性は感情表現が極端に乏しく、合理的に思考するタイプの人でした。

「幽霊協会」というところから電話がくる。私が「幽霊なんて全然信じない」と言うと、「あなたは幽霊新聞の最新号をお読みになりましたか?まあともかく、あなたは尖った硬い鉛筆さえあればいいのでしょう」と言ってきた。私は腹を立てて「幽霊なんか信じないし、尖った硬い鉛筆など大嫌いだ」と言い電話を切った。

電話をかけてきた幽霊協会は、彼女の自我に接触を図ろうとする無意識であり、抑圧されてきた感情の部分です。直接会いに来たのではなく電話、しかも声がつぶやくように小さいことから、自我と無意識内にある感情的な部分との接触に困難があることが伺えます。

河合先生は、「尖った硬い鉛筆」を「知性の鋭さ」というこの女性の武器を表すイメージだと分析しました。そして、「尖った固い鉛筆など大嫌いだ」と八つ当たりをし電話を切ってしまうことから、感情的な表現をしたいという思いが彼女の無意識にあることが分かりました。
合理的な思考を持つ彼女にとっての「影」は感情的になることだったのです。


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ある男性の夢です。
海に行きたくなかったが付き合いで行ったら、裸の少女が溺れていた。人工呼吸をしたら少女の息が戻ってほっとした。少女の体を温めるために、家に帰って少女に着せる服を探した。しかしたくさんある服は全て小さすぎて少女には入らない。服を探しながら目が覚めた。

海は彼の無意識です。瀕死の少女は彼の「アニマ」。意識との接触を断たれ、無意識の海で溺れかけていたアニマを彼は助けます。
彼の持っていた服はペルソナだと河合先生は判断しました。そして、ペルソナが小さすぎて彼にはアニマを包むことができないと分析したのです。

男は男らしく、女は女らしくという価値観の中で、彼は自分の中の女性性が消えかけていた。彼は長い診察を通じてアニマを獲得するための努力を続け、ペルソナを確立するために相当な困難と闘い続けました。

※ 現在は「男は男らしく、女は女らしく」という価値観が昔ほどは強くありません。アニマ、アニムス像が緩和されてきたり、また新しい理論が出てきそうです。


夢は心からの危険信号

どうしてアニマやアニムスなどの元型が出てきてしまうのでしょうか。

元型が出てくるときというのは、急に鬱になったり上手くいかなくなったり、破綻が起きた時です。心からの危険信号のようなものです。

残念ながら人間というのは、計画して変わるということができません。今までのものが破綻するから次を作っていけるというところがあります。

大抵の人ができないのですが、中にはできる人もいます。

大学で国体に出るようなスポーツマンの男性がいました。しかもキャプテンなのでいわゆる旧時代的な男性像があるのですが、彼にはすごく女性的な面がありました。最終的に、大事な試合に行くときには、ボーイッシュな女の子のようなファッションをすることで、バランスをとるようになりました。それが一番、周りから見られるペルソナも守りながら、自分の中のバランスをとって大事な試合に行くための、彼の出した答えだったのです。



セラピスト側に枠組みがあることが大事

肉の渦の夢を聞いて、「うわー、気持ち悪い」「この子大丈夫かしら」と思ってしまうと、夢からのメッセージをキャッチすることはできません。

どうやらこれの正体はグレートマザーで・・・それに対する居心地の悪さはどうやらあるイメージで・・・じゃあ今度実生活で起こっていることと照らし合わせていくと・・・なるほどこうだ、みたいにちょっとずつ分かっていく。

セラピスト側が元型の知識を持ち、夢に当てはめ、理解し、それができて初めて患者の苦痛を解くことができるのです。

我々の人間関係においても、知識とアンテナは大事です。

例えば子供が「この服買ってほしい」と言ってきたとき、「またもう、お金をせびって」ではなく、「この子、これまでいつも親が買い与えた服を着てきたのに、自分でこの服買ってほしいと言うとは、どういうことなんだろう」とか。

いつもたくさん写真を撮っている人が、なんか今日はさみしそうな写真ばかり撮ってるな、どうしたんだろう、とか。

お茶やお花にも、その時の自分の心の中の動きが出てきます。

読み取れさえすれば、すごいヒントを出してくれるということは多そうです。