知恵=知識 × 熱意+体験 である(書評:巧みな説明ができる人 できない人 中島孝志)


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GWの新幹線の中で読みました。
この方はものすごい量の自己啓発本を書いておられます。
デキる人向けの本が多い中、これはまだ私でも手に取れる内容でした。

私は説明するのが苦手です。
頭に浮かんだことを言語化できないし、頭で考えるのと口で喋るのを同時にできないし、順序立てて説明できないし、周りの音に気を取られるし、何を話しているのか途中で分からなくなります。どんだけ低スペックなんだ。よくバカにされます。

唯一家庭教師をしていた時だけは、子供の理解度を察しながら、言葉を選び、順番を組み立てて、分かりやすく説明することができていた気がします。

この時の説明力が戻って来てほしいと思っているため、このような本を見かけると読んでしまいます。

この本は私の悩みとは方向性が違いますが、例が具体的で分かりやすく勉強になりました。

 

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難しいことを簡単に説明できる人間になろう

人間を説明力で分別すると、4通りに分けられます。

  1. 簡単なことを難しく言う人
  2. 簡単なことを簡単に言う人
  3. 難しいことを難しく言う人
  4. 難しいことを簡単に言う人


4が実は一番すごいこと。
十分な知識があり、それを整理する力があるからです。

説明することで頭を整理できる

説明されるときより説明しているときの方が、より頭を整理できたという経験はありませんか?

説明することでより吸収できる。新人を脱した人をよりステップアップさせるのに使われる育成法です。私がブログを書く目的の一つでもあります。

説明していると、知識があやふやな箇所は上手くいかずストップしてしまいます。説明する側がよーく分かっていないと教えられません。何倍も勉強するからこそ、相手にわかりやすく説明できるということです。

ポイントを絞る

野球選手がコーチから「おまえの改善点は24カ所もある」と言われたら、1つずつ改善しているうちにフォームがバラバラになってしまいます。改善点を1つに絞り「右肩が上がっている。だから、右ひじを下に引け」と指摘してあげるほうが分かりやすい。野村監督のお話だそうです。

重要なのは、一番ポイントになる点を修正すると、それに引きずられて、ほかの些末な問題点がいつの間にか修正されてくるということです。

子供や不慣れな人を見ていると、つっこみどころがたくさん見つかりますが、あれもこれも指摘するよりもどこかポイントを絞って指摘してあげるといいんですね。

相手の言葉づかいを真似る

レストランにて、良い例と悪い例を挙げます。

  • 「お水ください」
    「はい、かしこまりました。お水ですね」

    「これ持ち帰りにしてほしいんだけど」
    「はい、お持ち帰りですね」

  • 「お水ください」
    「お冷やですか?」
    「そう、お冷や」

    「これ持ち帰りにしてほしいんだけど」
    「テイクアウトですね」
    「そう、それ」


後者は、相手の言葉遣いを揚げ足取っているように聞こえて失礼です。また、店員よりも客のほうが話す回数が多くなってしまいます。

アスペルガーには耳の痛い話ですね。相手のちょっとした言い間違いを指摘してしまいます。正しい言葉遣いでないと理解できないからであって、相手を責める気持ちは一切ないのですが。

でも安心してください。年をとると、自然と語彙力が増えて理解できるようになってきます。それと、分からないときは怖がらず「?」を顔に出していいんです。何も言わずとも相手が察して説明してくれます。

  • 「薄くて軽い時計を探してるんだけど」
    ×「こちらは厚さ5mm、重さ30gです」
    ○「こちらは薄さ5mm、軽さ30gです」

こちらの説明の良いところは2点あります。
1点目、相手の使った言葉で説明することにより、相手がすんなり理解できる。
2点目、厚い、重いというマイナスなイメージの言葉を避けている。

一流ホテルでは、お客様の言った言葉を言い換えることは絶対にないそうです。また、お客様がチェックインする際、名前が分かった直後から、「お客様」ではなく「○○様」と呼ぶそうです。「名前」を呼ばれることで、「自分は大切に扱われた」と簡単にインプットされるのです。仕事でもプライベートでも心がけたいですね。

 牛1頭をステーキサイズに調理する

説明するとき、いきなり全部を理解させようとしても、それは無理というものです。情報を小分けにする。一口サイズなら誰にでも食べられる。この「一口サイズにして調理すること」が説明する上で非常に重要なことです。

たとえば、
「~についてまず3つに分けて話します」「1点目は~」「2点目は~」「3点目は~」「いままでの話を整理します」という説明。

まずは、牛1頭を3つに切り分ける。そして、それぞれを調理して食べてもらう。さらに、簡単におさらいする。そうすると聴衆は「ああ、そんなことも聞いた」「そうだった、そうだった」とさっき聞いた話をすぐに思い出す。しかも、ポイントだけで理解できるので、ものすごく頭が良くなった感じがするのです。

whyとbecouseで論理的な説明

論理的に話を進めるときに効果的なのは、why、becauseを使った説明です。

「どうしてかといえば、・・・だからです」
「なぜならば、・・・ということなんです」

ただ「これはこうなのだ」と言うよりも、「どうしてそうなのか」をしないと納得しません。

発達障害の人に対しては、このような説明法がよく効きます。普通に「こうしてください」と言われても言うことを聞きません。理由を説明してくれればすんなり言うことを聞きます。理由なく命令だけだと、「どうして私のやり方よりあなたのやり方のほうを採用しなければいけないのか?」と理不尽に思ってしまうのです。

メタファー(比喩、暗喩)

メタファーは正確さには欠けますが、ポイントを大づかみで説明するには効果絶大です。

松下幸之助さんは、ロジックよりも例え話で分かりやすく説明するのが得意な人でした。

「成功の秘訣とは何でしょうか」
「雨が降ったら、あなたはどうしますか?」
「雨が降ったら・・・そうですね、傘を差すでしょうね」
「それが成功の秘訣ですよ」
「えっ、そうですか?」
「そうです。当たり前のことを当たり前にする。無理をしない。それが成功の極意です」


また、有名なホトトギスの句。

鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス (織田信長)
鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス (豊臣秀吉)
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス (徳川家康)

本人がそう詠んだわけではありません。しかし、たしかに彼ならそう言うだろう、というところに説得力があります。

参考「家康の将軍としての心得

大将というものはな、家臣から敬われているようで、たえず落ち度を探されており、恐れられているようで侮られ、親しまれているようで疎んじられ、好かれているようで憎まれているものよ。
したがって、家臣を扱うには禄(給料)で縛りつけてはならぬ。機嫌をとってもならず、遠ざけてはならず、恐れさせてはならず、油断させてはならないものよ。
つまるところ、家臣を率いる要点は惚れられることよ。これを別の言葉で心服とも言うが、大将は家臣から心服されねばならぬのだ。

 

数字とデータを利用する

×  かなりの効果が期待できます
○  前年対比、30%アップが見込まれます

×  ライバル社もそうとう利用しています
○  A社の○○事業部、B社の○○部門にもご活用いただいています

具体的な話をするために、データをきっちり頭にたたきこんで、いつでもすんなりアウトプットできるようにしておくことが、説明力です。

法則、公式を利用する

法則、原理、公式というものは、何も言わなくても万人が納得するものです。特に日本人はこういう権威に弱いです。

例:ハインリッヒの法則

「お客さんからクレームが来ました。たった1件だと甘く考えないでもらいたい。ハインリッヒの法則では、重大災害の裏には29件のかすり傷、さらに300件のヒヤリ体験があると言います。今回のクレームの裏には300件のヒヤリがあるんですよ。いつそれが表面化するか分かりません。接客には手を抜かないように、くれぐれもよろしくおねがいします」

今日のブログのタイトルにも公式を使わせていただきました。

感情でしか分からないこともある

 人間は感情の動物です。うなぎを食べたくなるのは、その栄養素やカロリーの数値に惹かれてではありません。ふと香ばしい香りを嗅いだ時、「あー、うなぎ食いてーーー!」となる。これが人間の本質、本能です。

説明力を発揮するときにも、論理的なだけではなく、メンタル面からのアプローチも視野に入れましょう。

「古池や かはづ飛び込む 水の音」
「The ancient pond. A frog leaps in the sound of water.」

過不足なく英訳されていますが、英語だとただの状況説明になってしまいます。ここから何を感じろというのでしょうか。感情でしか分からないこと、感情が動かされて初めて納得できることもあるのです。


文章は短く

文章が長いと、主語と述語がわからなくなり、何の話をしているのか、ポイントがつかめなくなります。

「今回の提案は・・・でありまして、これはどういうことかというと、今までは・・・していたのを・・・することによって、・・・が上昇することによって、・・・ができることで、さらに売り上げを拡大しようという目的で、こうなれば、・・・が50%アップする見込みとなっております」

これだと分かったような分からないような気持になってしまいます。
文章はなるべく単文形式で、「主語・・・述語。」で一度切りましょう。

また、なるべく余計な装飾をつけないことも、プレゼンの際には大事です。

「と思われます」→「です」「と思います」

「と言われています」→「です」

「について説明させていただきたいと思います」→「について説明します」

「については」→「は」

「に関しては」→「は」

「わたしとしては」→「わたしは」

マイナス面は先に、プラス面は後から言え

人間は後から聞いたことのほうが記憶に残るそうです。
マイナス面、デメリットはさりげなく挟み込み、プラス面、メリット部分を強調するということです。そうすれば、いいイメージが頭の中に残ります。

×「お前はスポーツはできるけど、勉強ができないな」
○「お前は勉強はできないけど、スポーツはできるよね」

順番を変えるだけで、けなし言葉がほめ言葉になります。

悪気はないのに嫌われるというアスペルガーの方、単に順番の問題かもしれません。
短期記憶が苦手なので、相手に好意があるときほどプラス面を先に言ってしまい、マイナス面が後ろにまわってしまう。または、プラス面を当たり前のこととして省略してしまう。相手にはマイナス面が強調されて伝わってしまいます。言いたいことを言ってから存分に褒めてあげたほうがいいかもしれません。

あがり症の治し方

あがり症を直すコツはズバリ、慣れ、だそうです。
しかし、慣れていない場合でも、考え方で自信を持つことができます。

もしミスしたとしても、脚本を無視して勝手にセリフを変えてもいいのです。
「シナリオは自分しか知らない」のだから。

「道程」高村光太郎

僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る。


あがるときは、自分のことしか頭にありません。しかし、このプレゼンは「だれのため」でしょうか。相手のため、お客さんのため、聴衆のためにやっているのです。

「今日、ここに来てくださった人のために、いい発表になりますように」と祈ること。間違っても「プレゼンがうまく聞こえますように」「早く終わってさっさと帰れますように」と祈ってはいけません。

 

 

面接官はどんな人材を欲しがっているのか

企業側はただ闇雲にいい人材を欲しがっているわけではありません。「この仕事ができる人」「あのチームに勤務してもらう人」と具体的なイメージを持って面接しているのです。

どんなに優秀であっても「あのチームには溶けこめそうもないな」ではダメだし、ときには「惜しいな、先月採用した人より彼女のほうがピッタリだった。でも今回の採用目的とは少し外れてるからパスだ」となることもあります。

つまり、今、企業が具体的に望んでいる人材のイメージは何だろう、とその狙いを考えることが大事です。この狙いに沿ってどれだけ自分のキャリアを説明するのがポイントです。

また、面接に落ちてもそう落ち込むこともなくなります。相手の欲しいイメージに合致しなかっただけで、自分の能力が悪いわけではないのだから。


タクシー運転手の高度な試験

著者の体験として、ある都市で出会った三ツ星タクシー運転手の話が出てきました。

運転が落ち着いていてスムーズでとても上手い。運転テクニックの表現として、三ツ星というのは非常に分かやすいものだなあ。一目でわかる説明力だ。水戸黄門の印籠のようなものだ。
というお話です。

私が衝撃を受けたのは、このタクシー運転手の受けた試験の話。
なんと、ダッシュボードにタバコを1本立てて、それが倒れないように指定コースを運転するというのです。

すごくないですか?
どんな感覚なのか乗ってみたいです。

リーダーとは

ノーマン・シュワルツコフ

リーダーとマネージャーとは異なるものだ。

マネージャーはシステムを管理し、店や道具を買い揃えるのが仕事。そういう人たちは、財務管理やシステム管理には適しているが、組織の基本要素である「人の存在」を忘れている。

リーダーは人をリードする人だ。人にはそれぞれ夢や希望があり、頭脳や感情を持っている。その人にやる気を起こさせ、その人が普段やらないことも喜んでやらせてしまう人のことだ。


リーダーの説明力が部下を生かす

ある会社のイベントに、一週間でどれだけたくさん名刺を集められるか新人に競争させるというものがある。受注や売上は関係なく、ただ単に名刺の枚数を稼げばいいだけ。毎年必ず「どういう意味があるんですか?」と質問する者が出てくる。

説明力のない上司だと「意味はないよ、単なるゲームだ」と説明。部下はやる気を出さずただイベントをこなすだけになってしまう。

説明力のある上司の場合。

「この仕事にどんな意味があるのですか?」
「それをつかむのが仕事なんだよ。正解なんてない。そこが学生時代と根本的に違うところだ」
「わかりません」
「わからなくていいさ。君の同期でも気付く人と気付かない人が現れる。それでいいんだ」
「俺の経験を話そうか。最初はアポなしの訪問は恥ずかしかった。でも日が経つにつれて恥ずかしさが消えてくる。それどころか、どんな人ならスムーズに名刺をくれるかまでわかってくるんだ」
「そうですか」
「2年目、3年目でアポなし訪問はつらいよな。30過ぎてやっていたら相手もあきれるかもしれない。けど、いまの君にしかできない仕事ってのもあるんだよ。いざとなったらアポなし訪問だってなんだって俺はできるんだ、という自信だよ。これを頭じゃなくて身体にDNAとして埋め込んでしまう。これが大事なのさ」
「・・・・・・」
「バカらしい、と思うか?でもね、仕事にはバカになってやるときも必要なんだ。バカになってやらないと見えてこない風景ってのがあるんだ。もし君が後輩や部下を持つようになったとき、理由が明確な仕事しか君は彼らに指示しないかね?明確に指示できる仕事ってのは実は楽なんだよ。頭で理解すればいいだけだからね。身体を使わないと、体験しないとつかめないキャリアもあるんだな。それを俺は君にプレゼントしたいんだよ。受け取ってくれるかい?」
「わかりました。ぜひやらせてください」
「その意気だよ。期待しているよ」

本当はこのイベントに深い意味などないかもしれない。でもこの新人はリーダーの言葉によってやる気が出たのです。

仕事というのは「勉強していないのでわかりません」というわけにはいきません。勉強していなくても、今までの知識を総動員して取り組むものなのです。

自分で意義を見出す、そして得心して仕事をする、これができれば人材はぐんと成長します。

知恵=知識 × 熱意+体験

松下幸之助さんの公式です。

商売は知恵でするもの。しかし、それにはまず知識が必要です。商品知識、ビジネスマナーも知らない営業マンからは誰も商品を買いません。

しかし、知識だけあってもやる気がなければ意味がありません。知識に熱意を掛け算する必要があります。知識が5しかなくても熱意が10あればトータル50。知識だけあって熱意がなければトータル0。リーダーに強い熱意があれば、知恵ある人は知恵を、才能ある人は才能を、労力のある人は労力を提供してくれます。

知識 × 熱意でもまだ足りない。これに体験が合わさってはじめて知恵となるのです。ただ惰性で感動なく年月を過ごした人よりも、1年の間に起こったことから大きな経験を得たという新人のほうが経験豊富といえます。同じ出来事からどれだけの経験を積めるか。その感性を磨かなければいけません。

さらに怖さを知れば一人前、と松下さんは言います。怖さを知れば、間違う手前でブレーキがかかる。怖さを知らない傲慢不遜な人は、油断や気のゆるみが出て命取りになるというのです。

頭の良さが最大の弱点

「こんなことぐらい、どうしてわからないの?」
「こんな簡単なことがどうしてできないの?」
「そんなことも知らないのか」

頭が良いと、他人を軽蔑してしまうことがあります。中には、言葉に出して相手にストレスをかけても何とも思わない人もいる。残念なことに、頭の良さが最大の弱点であることに本人は気付かず、孤立したり仕事が上手くいかなくなったりしてしまうのです。

人間が健康的に生きるために必要な人間力は、一言で言えば感性なのです。
感性とは、ズバリ、人の痛みを自分のこととして感じとる能力のことです。

もしも頭が良いのに生活がうまくいっていない人がいたら、その人は自分を嫌いなはずです。いくら自分が嫌になったって、一日中一緒にいなくちゃいけません。だから、さっさと自分自身と仲直りしてください。と言ってあげたい。

と本書は締めくくられています。


おわりに

私は中学までは成績が学年で1番でした。
「どうしてこんなことが分からないのか」と同級生に対して思っていました。

しかし、みんなが分かっていて私にだけ分からないことのほうが圧倒的に多かった。それは今で言う「空気が読めない」「人の気持ちが分からない」というアスペルガーの特徴から来るものでした。
圧倒的に劣等感・不安感の方が多かった。

人間力=感性だとしている時点で、この本は私には優しくない。
しかし、テクニックは吸収させていただきますよ。

自分自身と仲直り。死ぬ間際なら仲直りできるかもしれない。もう苦しんで社会に出なくていいんだ。もう追い詰めないで、自分を許してあげたい。

できればその境地が、なるべく早く元気なうちに来てほしいと思い、こうやって勉強しているわけです。

私は大学生になりバイトを選ぶ時、大人の世界に飛び込むのが怖くて家庭教師を選びました。私が家庭教師の時だけ話すのが上手かったのは、自分の得意分野で、自分より確実に劣る人が相手だったからだと思う。自分より下の人だから、緊張せず自分の思考に集中でき堂々と話せた。ロリコンと同じではないか?最低です。

中年になってようやく、本書でいう「感性」のカケラがちょっぴり出てきた。普通の人はこれを生まれつき持っているんだなあ。これがあれば、会話も、遊びも、仕事も、楽しいだろうなあ。それ自体が苦痛にはならないのだろうなあ。

私のカケラを苦しんでいる人に分けてあげたい。そう思ってブログを書いています。