松任谷由実さんは、私が音楽に目覚めた子供時代、すでに女王の地位を確立されていらっしゃいました。
クラシックが好きで、ポピュラー音楽に疎い子供だった私でさえも、ミュージックステーションとHEY!HEY!HEY! 、なんならCDTVも見ていたというJPOP黄金時代を過ごしました。
「真夏の夜の夢」のあやしい雰囲気、「春よ、来い」の女神感、ジブリの曲のお姉さん感。自分の世代より前の曲も、よくテレビで流れるので知っています。
声が特徴的ですよね。
ワ~レ~ワ~レ~ワ~、う~ちゅ~う~じ~ん~だ~、感がありますよね。
世代ではないので熱心なファンではありませんでしたが、なぜか分からないけど好きでした。その好きの理由が今回分かったような気がします。
私はなぜか、「松任谷由実はモンゴルでホーミーを習っていた」と思い込んでいたのですが、調べたところ記憶違いのようでした。習ってはいないけれど、分析したらホーミーと同じ波形をしていた、ということでした。
「ド」の音を発したら、1オクターブ上の「ド」、さらに「ソ」「ミ」なども聞こえてくるのが倍音です。倍音を突き詰めた歌い方がホーミーです。
ユーミンの歌声の秘密は倍音が豊かなことだと思っていましたが、今回もう一つの秘密が明らかになりました。
ユーミンの声はパイプオルガンだったのです。
(4月17日 マツコの知らない世界で松任谷由実さんが語ったこと)
中学の時にパイプオルガンの音を初めて聞いてね、教会中がガーッとなって、パイプオルガンに感応しちゃて涙がバーッて出た。
その時に、パイプオルガンの音がプリントされちゃった。
パイプオルガンのような音色してない?
ギフトだからしょうがないよね、困っちゃう。
テレビでこんな話したことない。
ギフト、発達障害の憧れのワードです。
いいなあ、こんなギフトあったらなあ。それは置いといて。
普通、倍音が多いと、ドラマチックで感情が溢れているように感じると思いますが、ユーミンの場合は逆に淡々としているように感じます。前者は浜崎あゆみや宇多田ヒカルなど。
その違いがパイプオルガンなんですね。
ユーミンの場合、確かにパイプオルガンの鍵盤押しっぱなし感、鍵盤で音程を切り替えている感があります。
全部にレガートがついているので、歌詞を語りかけるという感じではありません。このへんが下手だと言われるゆえんでしょうか。(私は全然下手だと思わないのですが、求める所が違う人は低評価をつけますよね)
音量を一定にして歌うというのは難しいものです。
例えば宇多田ヒカルの First Love を松任谷由実の真似をして歌ってみるとします(私はなぜかドラえもんの声になってしまいますが)。その後に宇多田ヒカルの真似をして歌ってみると、とても楽に感じます。
音ごとに自然な強弱をつけて歌うほうが、高い音も低い音もすべて一定に歌うよりも楽なんです。
そして、パイプオルガンは音程も一定。
しゃくらずに一発で目当ての音を出すのは難しいです。上手いと言われている歌手たちも、みんなしゃくって探り探り音程を合わせています。それは悪いことではないし、むしろ表情がつくのでカラオケの採点では加点されますが。楽器としては一音がフラフラしているのは良くありません。
普通の人がパイプオルガンを真似して歌ったら、のっぺりして下手くそだと思います。ユーミンの場合はパイプオルガンのような倍音の多い声質、さらにハモリも全部自分なので、本当にパイプオルガンのよう。
人間の声に近いのはチェロだとかサックスだとか言いますが、パイプオルガンで生きる声もあるんですね。人それぞれ、ものさしは一つではないんだと気付かされます。
私がユーミンに惹かれた理由がなんとなく分かりました。
吹奏楽部で、「一度音を出したらくねくね調節するな。最初からスパッと目当ての音程・音量を出せ」と言われていました。
これはユーミンの歌い方そのものでした。
私の目指すベクトル上にユーミンがいたのです。